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がけの上下に建築物を建てる際に注意したい『がけ条例』とは

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建設業

2022/11/11

がけの上下に建築物を建てる際に注意したい『がけ条例』とは

がけの周囲に建築物を建てる際に注意したいのが、がけ条例です。
がけ条例は都道府県や政令指定都市ごとに定められ、各自治体で名称も異なります。
がけは地震や大雨などによって崩落の危険があり、がけの上下に建築物を建てる際は、位置や構造に一定の制限が設けられています。
場合によっては擁壁工事が必要になり、多額の費用がかかってしまうこともあります。
今回は、がけ条例の内容やポイントを解説します。

自治体によって異なる規制の内容

大規模な地震や集中豪雨、台風などによって、日本では数多くのがけ崩れが起きています。
特に、人家の近くで起きるがけ崩れは、住民が逃げ遅れて死者が出てしまうこともあります。
そのため、各自治体では、がけの周囲に建てる建造物に対して、がけ条例によって細かな制限を設けています。

がけとは一般に2~3メートルの高さがあり、地表面が水平面に対して30度を超える斜度のある土地と定義されます。
ただし一見しただけでは、がけかどうかの判断が難しいことも多いため、建築工事にあたっては、各自治体での確認が必須といえます。

がけ条例の内容は自治体によって異なりますが、たとえば、規制の対象となるがけの範囲も異なります。
一例をあげると、東京都のがけ条例では高さ2メートル以上、角度30度以上のがけが規制の対象となっていますが、横浜市では高さ3メートル以上、角度30度以上のがけが対象となります。
また、高さ5メートル以上、角度30度以上のがけは、自治体のがけ条例ではなく、土砂災害防止法などで制限を受けることになります


がけの上下の土地は、がけ条例の対象に

東京都では東京都建築安全条例第6条で、高さ2メートルを超えるがけに近接して建築物を建築する場合、擁壁の設置やその他安全上適当な措置を講じなければならないと定められています。

条例の適用範囲は、がけの上下どちらに建築物を建てるかによっても異なります。
がけの上では、がけの下端からがけの高さの2倍に相当する範囲に建築物を建てることはできません
がけの下に建てる場合は、がけの上端から、がけの高さの2倍に相当する範囲に建てることが禁止されています
たとえば、2.5メートルのがけの下に建てる場合は、上端から5メートルの範囲、上に建てる場合は、下端から5メートルの範囲に建築物を建てることはできません。

注意したいのは、がけ自体が第三者の土地だったとしても、この条例が適用されるということです。
つまり、がけが第三者の土地で、新たに建築物を建てる土地が施主のものであっても、上端や下端からがけの高さの2倍に相当する範囲には、建築物を建てることができないのです。


擁壁工事を行えば建設自体は可能だが…

条例にもある通り、擁壁の設置などの安全上適当な措置を講じていれば、条例の適用範囲内であっても、建築物を建てることができます。
擁壁とは、がけの土砂が崩れるのを防ぐための壁状の構造物です。
東京都の場合、2メートルを超えるがけに、規制の適用範囲内で建築物を建てるには、2メートルを超える擁壁を設置する必要があります。

擁壁工事は自治体への申請や許可が必要な場合もあり、費用も低くはありません。
施主が想定していたコストと大幅に乖離することもあるため、工事前にはしっかりした調査と関係者との打ち合わせを行うことが重要です。

一方、すでに擁壁があって適切な維持管理がされていたり、堅固な地盤などによって安全上支障がないと認められている場合は、擁壁が不要になるケースもあります。
まずは、管轄の自治体の建築指導課で、擁壁の要不要を含めた確認を行いましょう。

このように、がけ条例の内容は複雑なため、万が一、後から規制に抵触していることがわかった場合、大きなトラブルに発展する可能性があります。
工事予定の土地ががけに面していた場合、必ずその自治体で条例の詳細を確認するようにしましょう。


※本記事の記載内容は、2022年9月現在の法令・情報等に基づいています。