こんにちは。税理士法人タクト職員の杉山です。今回は少額な減価償却資産の税務上の取り扱いについて説明いたします。
「今期は利益が出そうだから、新しいPCやオフィスチェアを買い揃えたい!」
決算前にそう考える経営者様は多いはずです。しかし、買った後に「えっ、これ全額を経費にできないの?」と税理士に言われて青ざめる……なんて経験はありませんか?
通常、固定資産は法定耐用年数に応じて、数年かけて少しずつ経費(減価償却費)にするのが原則です。しかし、金額によっては「買った瞬間に全額経費」にできる特例が存在します。
今回は、知っている社長だけが得をする、買い物の「金額の壁」と「税務戦略」について、わかりやすく解説します。
1. 何も考えずに経費にできる「10万円未満」の壁
まず基本となるのが「10万円」のラインです。使用期間が1年未満、もしくは取得価額が10万円未満のものであれば、「消耗品費」等として、その期に全額経費計上が可能です。
ここに注意!「セット販売」の判定基準
「1脚3万円の椅子を4脚買ったから12万円。でも1脚は3万円だから10万円未満でOKでしょ?」
これは注意が必要です。税務上の判定は、通常1単位として取引される単位ごとに行います。
- 応接セット:テーブルと椅子がセットで取引されるため、1組の合計額で判定
- カーテン:1つの部屋で数枚組み合わせて機能するため、部屋単位の合計額で判定
うっかりセット購入で10万円を超えてしまわないよう、見積もりの段階でこの「単位」を意識することが重要です。
2. 中小企業の最強の武器「30万円未満」の特例
中小企業(青色申告法人)には、さらに強力な武器があります。それが「少額減価償却資産」の特例です。
取得価額が30万円未満(2026年4月1日以降、特例対象が30万円未満から40万円未満に引き上げられる予定)であれば、年間合計300万円(2026年4月1日以降、変更なし)まで、その期に全額を経費(即時償却)にすることができます。
※事業年度が1年に満たない場合は、300万円を月数按分した金額が上限となります。
例えば、29万8000円のハイスペックPC。通常なら4年かけて経費にするところを、この特例を使えば買った瞬間に約30万円の利益を圧縮できます。決算直前の節税対策として非常に人気がある手法です。
さらに、今後の税制改正でこの上限額が引き上げられる可能性も示唆されており、経営者としては見逃せないポイントです。
3. 知らないと損する「償却資産税」の落とし穴
「じゃあ、全部30万円未満の特例を使って即時償却すればいいんですね!」
実はそこに「税金のトレードオフ」があります。市区町村に支払う「償却資産税(固定資産税の一種)」の存在です。
| 種類 | 取得価額 | 法人税(経費化) | 償却資産税 |
|---|---|---|---|
| 少額減価償却資産 (中小企業の特例) |
30万円未満 | 即時全額経費 | 課税対象 |
| 一括償却資産 | 10万円以上 20万円未満 |
3年で均等償却 | 非課税 |
30万円未満の特例を使うと、法人税はすぐに減りますが、償却資産税の申告対象になります。
一方で、「一括償却資産」(20万円未満)を選択すれば、3年かけての経費化にはなりますが、償却資産税はかかりません。また、途中で売却や除却をしても、3年間の償却スケジュールをそのまま継続できるという管理上のメリットもあります。
「今すぐ大きな利益を消したいか」「長期的に固定資産税を抑えたいか」。この選択が経営の質を左右します。
まとめ:貴社にとっての「最適解」を選んでいますか?
「たかが備品の購入」と思われがちですが、その処理方法一つで、その年の利益額、納税額、そして事務負担まで大きく変わります。
企業の状況や税務戦略によって、取得時に個別の資産ごとに柔軟に償却方法を選択することが、賢い企業経営には不可欠です。
「ウチの場合はどの方法が一番おトクなの?」とお悩みの方は、ぜひ一度税理士法人タクトまでご相談ください。適正な申告はもちろん、貴社の成長を見据えた最適な税務戦略をご提案いたします。