超高齢社会へ突入し、日本では『生産年齢人口』が減少しています。
生産年齢人口とは、生産活動の中心となる15~64歳の人口のことで、2021年1月1日時点では約7,556万人と、2020年の約7,612万人から56万人も減っていることがわかりました。
生産年齢人口の減少は労働力不足を招き、企業における人手不足の深刻化に拍車をかけます。
そこで、かねてから注目を集めているのが、シルバー人材の活用です。
労働意欲の高い高齢者が増えている今、企業がシルバー人材を活用するメリットや、人事面での注意点などを解説します。
シルバー人材を活用するメリット
生産年齢人口はこの先も減少していくといわれており、2040年には6,000万人を切るという試算もあります。
この生産年齢人口の減少は、国際競争力の低下や、労働者を構成する年齢比率の変化など、さまざまな影響をもたらします。
特に企業においては、労働力の確保が難しくなり、雇用の質の低下にもつながります。
そこで昨今では、そんな人手不足を課題とする企業の助け舟として、シルバー人材の雇用に注目が集まっています。
そもそもシルバー人材とは、定年退職者など一線を退いた高齢者と定義され、年齢的には60歳以上を対象としています。
この年代には、定年退職したとはいえ、まだまだ就業意欲の高い人が多く、自らの能力を使って収入を得ると共に、生きがいや社会参加を実現したいと考えている人がたくさんいます。
そんなシルバー人材に企業側が求めているのは、シルバー人材の持つ豊かな知識や技術、人脈などです。
長年の経験により培われたノウハウは、若手社員にはないものであり、シルバー人材のツテで、新しい取引先とつながることができるという即戦力としての期待感もあります。
また、超高齢社会のいま、高齢の消費者からのニーズは無視できません。
高齢者の視点を持つシルバー人材を商品開発やサービス開発に参加させることで、シニア世代の需要に応える商品やサービスの開発も期待できるでしょう。
もちろん、労働への意欲が高いことも、大きなメリットです。
内閣府の発表した『令和3年版高齢社会白書』では、現在就労中の60歳以上の約4割の人が「働けるうちはいつまでも働きたい」と答えていることがわかりました。
70歳くらいまでもしくはそれ以上になっても働きたいという回答と合計すれば、約9割の人が高齢者になっても高い就業意欲を持っているという結果になりました。
労働に対して前向きで、意欲的に働くシルバー人材の姿は、会社の若い従業員にもよい影響を与えるはずです。
組織の活性化や、従業員のモチベーションアップなどの観点から考えても、シルバー人材の雇用にはメリットがあるといえそうです。
高齢者を雇用するときには配慮が必要
シルバー人材は、一般的な新卒採用や中途採用とは、採用の仕方や働き方も異なります。
高齢者であるがゆえの配慮も必要で、受け入れ環境が整備されていないと、せっかく採用しても離職につながってしまいます。
たとえば、シルバー人材を受け入れる際には、一般的にフルタイムで雇用することはほとんどありません。
当事者との相談が前提となりますが、一般的にはシルバー人材の体力面などを考慮したうえで、時短勤務制やシフト制などを取り入れ、スポットで働いてもらうことになるでしょう。
ほかにも、若手従業員との認識のすれ違いや、体力面や健康面での懸念、病気による急な欠勤や早退なども考えられます。
これらの点をうまくカバーしながら、本人ともよく話し合って、柔軟な働き方を取り入れていくことが重要です。
政府は、高齢者が自分の意欲と能力に応じて、年齢に関係なく働き続けることのできる『生涯現役社会』の実現を目指しています。
高齢者の就業確保措置や各種助成金などは、企業における高齢者の雇用の拡大や、就業機会の確保などを目的として行われており、今後もさまざまな支援策を打ち出していくことが予想されます。
現在も支援機構による相談受付や助言サービスなどが行われています。
シルバー人材の活用を考えている企業であれば、まずはそちらを利用してみてはいかがでしょうか。
※本記事の記載内容は、2022年8月現在の法令・情報等に基づいています。