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令和5年の年末調整について(税理士法人タクト 監査担当者・蘇力徳)

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税務・会計

2023/12/22

令和5年の年末調整について(税理士法人タクト 監査担当者・蘇力徳)


 

 みなさん、こんにちは!税理士法人タクト 職員の蘇力徳です。

 2023年残りわずかとなりました。今年はいかがお過ごしになられたでしょうか?2023年はいろいろな出来事がありましたね!新型コロナウイルス感染症が5類に移行され、コロナ禍で中止となっていたイベントが再開されるようになりました。また、線状降水帯による大雨や史上最高の暑さとなった夏、そして昨年から続く物価高、さらに10月からはインボイス制度も始まりましたね。

 今年も年末調整の時期が到来しましたので、令和5年の年末調整に関係する重要な改正ポイントをご解説いたします。主に4つのポイントがあります。

 

 

1.給与所得の源泉徴収票及び給与支払明細書の電子交付の特例の改正(適用:R5.4.1以後)

 

改正の背景:

 給与所得者の源泉徴収票は、給与所得者の承諾を得た場合、電子交付(電子メールなど)できます。一方、意思表示のない給与所得者の意向確認に時間を要してしまうため、電子交付制度への移行が進まないという指摘がされていました。

 

改正の内容:

 今までの「①給与所得者の承諾を得なければならない」と「②承諾を得られない場合は電子交付できない」に新たに「③給与支払者が定める期限までに「承諾しない」旨の回答がない場合は「承諾があった」ものとみなす」と追加しました。

 

改正の留意点:

① 今回の改正は、給与に限ります。給与支払者と給与所得者との間には雇用関係があり、承諾するかどうかの意思確認は容易であると考えられることを踏まえたものとされています。

② 承諾するかどうかの回答期限等について具体的な定めはありません。定めはありませんが、給与所得者の勤務状況等を考慮して回答に必要な期間を十分設けることや、回答期限前に未回答者へ再通知するなどの配慮は必要です。

 

 

 

2.住宅ローン税額控除等の改正(適用:R4.1.1以後)

  住宅ローン税額控除等の改正については、適用がR4.1.1以後となりますが、改正1年目は確定申告していただくため、改正2年目となる今回から年末調整に影響されます。では、改正の6つのポイントを整理しましょう。

 

改正のポイント

① 特例措置の内容が見直され、適用期限が4年間延長されました。

改正前:  令和3年1231日まで

改正後: 令和7年1231日まで

 

② 本来住宅ローンを組む必要がない高所得者による借入れや控除の適用が起こりにくい制度にするため、所得要件が厳格化され、適用対象者の合計所得金額が引き下げられました。

改正前: 3,000万円以下

改正後: 2,000万円以下

ただし、注意していただきたいのは、令和3年以前に入居し、既に住宅ローン税額控除の適用を開始している場合は、令和4年以降も従前どおり「合計所得金額3,000万円以下である年」にのみ住宅ローン減税が適用されます。

 

③ 借入限度額・控除率・控除期間について

【認定住宅等の場合】

 新築住宅・買取再販住宅の環境性能によって、借入限度額が上乗せされています。下の表を御覧ください。


 一方、既存住宅の場合、借入限度額は3,000万円、控除率:0.7%、控除期間:10年で、環境性能に関わらず一律です。

 

 

【認定住宅等以外の住宅の場合】

 新築住宅・買取再販住宅の借入限度額・控除率・控除期間について、下の表を御覧ください。






 令和6年以降、認定住宅等以外の買取再販住宅の場合は住宅ローン税額控除の適用を受けられますが、認定住宅等以外の新築住宅は住宅ローン税額控除の適用を受けられません。

 ここの「令和6年・令和7年」の欄は、令和5年末までに新築の建築確認を受けた住宅や買取再販住宅へ、令和6年又は令和7年に居住開始する場合の借入限度額・控除率・控除期間を指します。

 一方、既存住宅の場合は借入限度額2,000万円、控除率:0.7%、控除期間:10年になり、令和6年又は令和7年に居住しても住宅ローン税額控除の適用を受けられます。

 

 

住宅ローン用語について復習しましょう。

 

・買取再販住宅(いわゆるリノベーション物件)

 宅地建物取引業者が特定増改築等をした既存住宅を、その宅地建物取引業者の取得の日から2年以内に取得した場合の既存住宅を指します。(※取得時点で、既存住宅が新築された日から起算して10年を経過したもの)

 

・認定住宅

 認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅を指します。

 

ZEH水準省エネ住宅【ZEH(ゼッチ):ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス】

 家庭で使用するエネルギーと、太陽光発電などで創るエネルギーをバランスして、1年間で消費するエネルギーの量を実質的にゼロ以下にする住宅です。認定住宅以外で、日本住宅性能表示基準における断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上の性能がある住宅を指します。

 

・省エネ基準適合住宅

 認定住宅・ZEH水準省エネ住宅以外で、日本住宅性能表示基準における断熱等性能等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級4以上の性能がある住宅を指します。

 

・既存住宅

 建築後使用されたことのある家屋で、耐震基準に適合するものとして証明等がされたものを指します。

 

・中古住宅

 既存住宅のうち、買取再販住宅以外の既存住宅を指します。注意していただきたいのが、今回の改正で登場する「既存住宅」は、「中古住宅」ではありません。「既存住宅」は「買取再販住宅」+ 「中古住宅」となります。





④ 令和6年以降に建築確認を受ける新築住宅について、省エネ基準への適合を要件化しました。

 

⑤ 新築住宅の床面積要件について、令和5年以前に建築確認を受けたものは「40㎡以上」(合計所得金額1,000万円以下)に緩和します。

 

⑥ 既存住宅の経過年数基準について、経過年数基準(耐火住宅25年、非耐火住宅20)が廃止され、「昭和57年以後に建築された住宅」(新耐震基準適合住宅に適合している住宅とみなされる)に緩和されました。

 

 


3.個人住民税における合計所得金額に係る規定の整備(適用:R5.1.1以後)

 下の図表のように令和5年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書に「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」欄が新設しました。

 

 具体的には、分離課税対象の退職所得金額がある配偶者や扶養親族の氏名等を「扶養控除等(異動)申告書」「給与支払報告書」に記載すると、住民税申告書を提出しなくても、配偶者控除や扶養控除の適用が受けられるように改正されました。

 

 

4.日本国外に居住する親族に係る扶養控除の適用に関する改正(適用:R5.1.1以後)

 扶養控除の対象となる扶養親族の範囲について、国外居住親族のうち、30歳以上70歳未満の者が除外されました。ただし、 30歳以上70歳未満の場合でも「留学生」「障がい者」「38万円以上の送金を受けている者」は除外されません。また、29歳未満又は70歳以上の国外居住親族は、改正後も扶養控除の適用対象者です。

 

 いかがだったでしょうか。以上となりますが、何かご不明点等がありましたら、お気軽に税理士法人タクトまでお問い合わせください。