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2021/11/15

犯罪行為にもなる『労災かくし』の大きすぎるリスク

業務中や通勤途中に発生したケガや病気のことを『労働災害(労災)』といいます。
労災が起きた場合、休業が4日以上に及ぶときは、事業者が労働基準監督署に労働者死傷病報告を行う必要がありますが、さまざまな理由によって、この報告を行わなかったり、虚偽の報告を行ったりするケースが見られます。
これらは『労災かくし』と呼ばれる犯罪行為です。
今回は、罰則が科せられることにもなる労災かくしのリスクについて、説明します。

労災の治療は健康保険ではなく労災保険で治療

労災で負傷したり病気になったりした場合、労働法の一つである労働者災害補償保険法に基づいて、労災保険より治療費などの給付が行われます。

労災保険は、業務中や通勤途中に起きた出来事に起因する怪我や病気、死亡などに対して必要な給付を行う制度で、従業員を一人でも雇用する事業者は、必ず加入しなければいけません

労災に該当するかどうかは、個々のケースで判断されますが、仕事中に起きた災害により、後から身体に影響が出た場合なども労災と認定されることがあります。
もし労災に該当するかどうかで迷ったら、労働基準監督署の相談窓口や厚生労働省の委託事業である労災保険相談ダイヤルなどに相談してみることをおすすめします。

また、業務中や通勤途中以外の怪我や病気は、健康保険で治療を受けることになりますが、労災の場合は、労災保険を使って治療を受けることになります。
労災保険は健康保険よりも給付が手厚く、療養補償給付として怪我や病気の治療にかかる費用の全額を受け取れるほかに(健康保険は3割が自己負担になります)、休業補償給付として、休業4日目から休業が終わるまで過去3カ月間の平均賃金の8割程度(健康保険は約67%が支給されます)を受け取れます
さらに障害が残った場合には障害補償給付、死亡した場合には遺族が遺族補償給付を受けることなども可能です。

そこでもし、健康保険を使ってしまうと、休業補償給付などは受けられなくなります。
健康保険から労災保険への切り替えをするとしても、一時的に治療費を全額負担することになるうえ、手続きが終了するまでに2~3カ月以上の時間を要することになるので、注意が必要です。

そして、労災が発生し休業が4日以上に及ぶ場合には事業者は速やかに労働基準監督署に労働者死傷病報告をする必要があります。
労災であるにもかかわらず、労働基準監督署に労働者死傷病報告をしなかったり、虚偽の報告をしたりした場合には、『労災かくし』になってしまいます。

労災かくしを行う理由は会社のイメージダウンや取引先や顧客からの信頼を失うことを恐れたためであったり、そもそも労災保険に未加入だったりと、さまざまです。
過去には、ほかの法律違反の発覚を恐れて、労災を報告しなかったというケースもありました。
特に、建設業の下請けでは、労災が起こると元請企業の労災保険を使うことになりますので、元請けからの発注停止などを懸念して、『労災かくし』をしてしまうことがあります。
また、労災事故のあった会社は、支払う労災保険料が高くなる可能性があるため、それを避けるために労災かくしをするケースもあります。

労災が発生したという報告を受けた労働基準監督署は、事故の原因や、その会社に法令違反がなかったかなどを調査し、必要に応じて行政指導や刑事告訴を行います。
会社にとって不利益は生じますが、いかなる理由があったとしても、労災かくしは犯罪行為なので、絶対にしてはいけません
また、従業員に自費で診療を受けるように促したり、従業員からの労災保険の使用依頼を断ったりすることも厳禁です。


労災かくしが発覚した場合のペナルティ

労災かくしが発覚した場合、労働安全衛生法第120条に基づき、事業者には50万円以下の罰金が科せられます

刑事罰のほかにも、従業員の労働意欲の減退や再発防止策を講じる機会の損失など、目に見えないデメリットもたくさんあり、失うことになる会社の利益は大きいといえます。

建設関係企業であれば、建設事業無災害表彰を受けた事業場は、表彰状を返還する必要がありますし、労災保険のメリット制(その事業場の労働災害の頻度に応じて、一定の範囲内で労災保険率または労災保険料額を増減させる制度)の適用を受けている事業場では、メリット収支率の再計算を行い、必要に応じて還付金の改修を行うなど適正な保険料を徴収されます。

このようにさまざまなリスクのある労災かくしですが、それでもなかなかなくなることはありません。

2021年1月には、大阪のプラスチック製造業者が、従業員の休業を伴う負傷を報告しなかったとして書類送検されました。
また、同年3月には岐阜の菓子製造業者が、2年間で11件の労災かくしを行ったとして、書類送検されています。

労災かくしを防止するには、事業者の『労災かくしをしない』という強い意志はもちろんですが、前もって連絡系統を整備し、事業者が、労災が発生した際に何が起きたのかを滞りなく把握できる状態にしておくことが大切です。

また、現場の判断で労災を隠してしまう可能性もあるため、労災かくしは犯罪であることや、労災には健康保険が使えないことなどを全社員に周知しておくことも重要です。

労災かくしは、従業員による労働基準監督署への相談や、治療の際の医師とのやり取りなどで判明する場合がほとんどです。
故意に隠そうとしても、隠しきれないものだと認識しておきましょう。

労働者が安心して治療を受け、休業ができるようにするためにも、労災が起きたら速やかに労働者死傷病報告を行うよう心がけておくことが大切です。


※本記事の記載内容は、2021年10月現在の法令・情報等に基づいています。