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口コミ対策どう変わる? 新しい『プロバイダ責任制限法』を解説!

News新着情報

2021/08/18

口コミ対策どう変わる? 新しい『プロバイダ責任制限法』を解説!

急速にネット社会化しているわが国において、悪意のある書き込みによる被害は、大きな社会問題となっています。
これまでは、悪意ある書き込みをされたとしても、裁判手続きなどに時間がかかってしまい、対応が遅くなるという問題がありました。
これを受け、2021年4月に、インターネット上の投稿を巡る新たな法整備として『改正プロバイダ責任制限法』が国会で可決されました。
今回は、同法によって、裁判手続きがどのように変わるのかを解説します。

障壁だった『発信者情報開示』を迅速に

リアルバラエティー番組の出演者がネットで誹謗中傷を受け、命を絶ってしまった悲しい事件はいまだ、記憶に新しいことと思います。
この件の裁判では、投稿者に対して約129万円の損害賠償が命じられました。
しかし、簡単な道のりではありませんでした。
ハードルとなったのは、投稿した人は誰なのかを特定するための請求、つまり発信者情報開示手続でした。

芸能人や一般人にとどまらず、企業においても同じような事例は存在しています。
損害賠償請求をするかどうかは別としても、何度も同じ人と思われる人からの酷い投稿が続いたら、どうにかして、この人からの投稿を止めるように対処したいと考えるでしょう。

しかし、現在の法制度では情報の発信者を特定するためには、複数回の裁判手続きを経なければならないという問題がありました。
また、通信事業者は、IPアドレスなどの情報を比較的短期間しか保有しない(通信事業者によって異なりますが、概ね保存期間は3カ月程度)ことから、開示請求をしようと決めたときにはすでに遅く、情報の保存期間が終了していたという場合もあります。

今回の改正法では、このような問題に対処するために、『発信者情報開示命令』の枠組みのなかで、IPアドレス等の情報を持つサイト管理者に対しても、氏名住所等の情報を持つ通信事業者に対しても、一体的な手続きで開示を求めることが可能になりました
具体的には、IPアドレスを保有しているサイト管理者に対し、『IPアドレスと投稿者を紐づける情報を保有しているプロバイダに関する情報を提供してほしい』という命令の申し立てや、『発信者情報開示命令が終了するまでは保有する情報を消してはいけない』という命令の申し立てを組み合わせて利用することが想定されています。
どのぐらいのスピード感で投稿者を特定できるかは、まだ行われていないため憶測でしかありませんが、少なくとも現在の手続きよりは、発信者が迅速に特定できると期待されています。


『ログイン型投稿』開示対象の拡大を条文に明記

現行法は、2ちゃんねるなどのような、投稿時のIPアドレスが保存されているサイトを想定していました。
しかし、それでは『ログイン型投稿』のサイトとは事情が違ってしまいます。

ログイン型投稿とは、TwitterやInstagram、Googleマップの口コミなどの、IDやパスワードを入力し、ログインした上で投稿するものです。
このような形式のサイトでは、ログインしたときのIPアドレスは保有しているものの、実際に問題となる投稿をした時点のIPアドレスは保有していません。
しかし、現行法は権利侵害を発生させる通信、すなわち投稿した時点の情報が開示対象であると定めているため、ログインやログアウトのための情報は条文上の開示対象ではなかったのです。
そこで、現行法の下では、投稿直前にログインした情報も権利侵害に関する情報だなどと主張し、開示を求めていました。

改正法では、権利侵害そのものの情報だけではなく、その関連情報も明示的に開示対象として含めることで、ログインやログアウトした際の情報を求めることができるようになりました
問題となる投稿をした直前にログインやログアウトした人が、問題となる投稿もしているはずという考え方は一般的なイメージとして受け入れやすいでしょう。
ログインした際のIPアドレス等の情報が開示された後は、通信事業者に対し、IPアドレスと結びつく住所・氏名の開示を求めるという手続きになる点は同じです。

改正プロバイダ責任制限法の成立により、今後ますます、ネットトラブルをめぐる告発や裁判は増加するとみられます。
ただ、実際に改正法下での運用がスタートするまでは、細かい事項を決める規則の制定を待つ必要があり、今後の動向を注視していく必要があるでしょう。

いずれにしても、口コミが持つ影響力は、法人・個人に関わらず、無視できない状況になっています。
企業であれば、良い口コミが増えるように努力する必要が生じますし、個人であっても、SNS上の書き込みなどによるトラブル対応法について、知っておくことが大切です。


※本記事の記載内容は、2021年7月現在の法令・情報等に基づいています。