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今年の「手取り」が変わる?令和7年度の確定申告に関する絶対に知っておくべき5つの衝撃(税理士法人タクト職員 蘇力徳)

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コラム

2026/02/13

今年の「手取り」が変わる?令和7年度の確定申告に関する絶対に知っておくべき5つの衝撃(税理士法人タクト職員 蘇力徳)

こんにちは!税理士法人タクト職員 蘇力徳です。

最近物価の高騰が続き、家計への圧迫を肌で感じる日々が続いています。「給料は上がらないのに、スーパーの買い物袋は軽くなるばかり……」そんな溜息が聞こえてきそうです。特に、パートやアルバイトで働く方やそのご家族にとって、収入を抑えて税負担を避ける「年収の壁」に伴う就業調整は、自由な働き方を阻む大きな枷となってきました。

こうした社会の歪みを是正すべく、令和7年度税制改正では私たちの「手取り」に直結する所得税の仕組みが抜本的に見直されます。今回の改正は、単なる減税措置ではありません。物価上昇への対応と、深刻な人手不足を解消するための「働き方のアップデート」という強いメッセージが込められています。私たちの生活にどのような変化をもたらすのか、特に重要な5つのポイントを詳しく解説します。

ポイント1:基礎控除の「10万円引き上げ」と低所得者への手厚い上乗せ

今回の改正で最も対象範囲が広いのが「基礎控除」の拡充です。基礎控除とは、納税者の所得から一律に差し引ける、いわば「生活に最低限必要な経費」のようなものです。

合計所得金額とは、給与収入から「給与所得控除」を差し引いた後の金額や、事業収入から経費を差し引いた利益などの合計額のことです。今回の改正では、合計所得金額が2,350万円以下の納税者を対象に、基礎控除が原則として従来の48万円から58万円へと10万円引き上げられます。

さらに注目すべきは、合計所得金額が655万円以下の層に対して行われる「上乗せ措置」です。所得階層に応じて5万円〜最大37万円がさらに加算されますが、ここで見逃せないのが「恒久措置」と「時限措置」の区別です。

  • 合計所得金額132万円以下の層(最大37万円の上乗せ): 今後も続く「恒久的な措置」です。
  • 合計所得金額132万円超〜655万円以下の層(5万〜30万円の上乗せ): 今回限りの「時限的な措置」です。

改正の背景について、基礎控除額が定額である場合、物価が上昇すると実質的な税負担が増えるという課題にあります。物価が上がっているのに控除額が変わらないことは、実質的な増税(ブラケット・クリープ現象)を意味します。今回の引き上げは、こうした不合理を解消し、特に中・低所得者層の生活防衛を目的としたものです。

ポイント2:給与所得控除の「最低保障額」アップで、パート・アルバイトの壁が動く

次に大きな変更点は、会社員やパート・アルバイトの方が受けられる「給与所得控除」の見直しです。これは、サラリーマンにおける「概算経費」のような役割を果たします。

これまで、年収がいくら低くても最低55万円は控除されていましたが、これが65万円へと10万円引き上げられます。 この恩恵を直接受けるのは、主に給与の収入金額が190万円以下の層です。

なぜこの層が狙い撃ちされたのでしょうか。それは、深刻な人手不足を背景に、学生や主婦(夫)層が「これ以上働くと税金がかかって損をする」として労働時間を抑える「就業調整」を解消するためです。物価高に合わせた最低賃金の引き上げが進む中、控除額もセットで引き上げることで、働き損を防ぎ、より柔軟な労働力の供給を促す狙いがあります。

ポイント3:【新設】大学生の親を救う「特定親族特別控除」の誕生

今回、子育て世帯にとって最大の目玉となるのが、19歳以上23歳未満(主に大学生年代)の子を持つ親を対象とした「特定親族特別控除」の新設です。

これまでの制度では、子の年収が「103万円」を超えると、親が受けられる63万円の特定扶養控除がゼロになるという「崖」が存在していました。これが、学生が繁忙期にバイトをセーブせざるを得ない大きな要因でした。

新制度では、この負担増が「段階的」になります。

  • 子の給与収入が150万円(合計所得85万円)まで: 従来の特定扶養控除と同じ「63万円」の全額控除が維持されます。
  • 子の給与収入が150万円超〜188万円(合計所得123万円)まで: 収入に応じて、控除額が段階的に減っていく(3万円まで)方式で控除が残ります。

これにより、授業料の高騰やインフレに直面する家計を支えつつ、学生が「親の扶養を外れること」を過度に恐れずに働けるようになります。人手不足に悩む現場にとっても、学生にとっても待望の改正と言えるでしょう。

ポイント4:扶養・配偶者控除の所得要件が「103万から123万」へ

ポイント1と2で解説した通り、「基礎控除」と「給与所得控除」がそれぞれ10万円ずつ(計20万円)引き上げられます。これにより、扶養親族や配偶者が控除を受けられる所得要件も、従来の「合計所得48万円以下」から「58万円以下」へと引き上げられます。

いわゆる「103万円の壁」の正体は、基礎控除(48万)+給与所得控除(55万)=103万という計算式でした。令和7年度からは、これが以下のように変化します。

「年収の壁」の構造変化(給与収入のみの場合)

改正前後の年収の壁比較
項目 改正前(従来) 改正後(令和7年分以降) 計算の根拠
合計所得金額の要件 48万円以下 58万円以下 基礎控除の引き上げ
給与収入の壁(額面) 103万円以下 123万円以下 58万(基礎) + 65万(給与控)

この「123万円」という新基準は、扶養控除だけでなく、配偶者控除や障害者控除の判定にも適用されます。

【重要】ここだけは要注意!

配偶者特別控除の「上限(合計所得金額133万円以下)」については、今回引き上げられていません。あくまで「扶養枠」に入れるかどうかの入り口が広がったのであり、制度の末端部分は据え置かれている点に留意が必要です。

ポイント5: 令和7年分の改正のタイミングに注目

今回の改正は「令和7年12月1日施行」という変則的なタイミングとなっています。

  • 準確定申告: 令和7年11月30日以前に発生した準確定申告については改正前の法令が適用されていますが、更正の請求を行うことで改正後の有利な控除(基礎控除の引上げ等)の適用を受けられる可能性があります。
  • 年末調整との不一致: 11月30日以前に給与の支払いを受けて年末調整が完了した納税者の場合、改正後の法令を適用するためには確定申告を行う必要があります。

最後に

今回の改正の基礎控除の引き上げは「所得税のみ」の改正であり、個人住民税の基礎控除は改正されません。ただし、給与所得控除の引き上げは住民税にも反映され、住民税への影響(令和8年度分から)は所得税とは異なる動きをすることになりますので、注意が必要です。