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補聴器購入費用、医療費控除の対象になる?知っておきたい手続きと注意点(税理士法人タクト 監査担当者・久保田孝保)

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コラム

2025/04/07

補聴器購入費用、医療費控除の対象になる?知っておきたい手続きと注意点(税理士法人タクト 監査担当者・久保田孝保)

税理士法人タクト職員の久保田孝保です。今回は補聴器を購入した場合、医療費控除の対象となるかについて説明させて頂きます。

はじめに

補聴器の購入費用が医療費控除の対象となるか否かについて、ご質問をいただく機会が多くございます。補聴器は日常生活の質を維持・向上させるために重要な器具ですが、その購入費用の全額が自動的に医療費控除の対象となるわけではありません。所得税法及び関連通達の規定に基づき、一定の要件を満たす必要がある点をまずご理解いただくことが肝要です。

医療費控除の基本的な考え方と補聴器の位置づけ

所得税法における医療費控除は、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る医療費を支払った場合に適用されます。その範囲は所得税基本通達73-3等で具体的に示されており、原則として「医師等による診療、治療、施術又は分べんの介助(以下、診療等)を受けるため直接必要な費用」と定義されています。

同通達では、医療費に含まれるものとして、(1)医師等による診療等を受けるための通院費や医療用器具等の購入費用で通常必要なもの、(2)自己の日常最低限の用をたすために供される義手、義足、松葉づえ、補聴器、義歯等の購入のための費用、が例示されています。

ここで重要なのは、補聴器が例示に含まれているものの、その購入が「医師等による診療等を受けるため直接必要な費用」または「自己の日常最低限の用をたすために供される」ものとして、客観的に認められる必要があるという点です。単に加齢等により聴力が低下したと感じ、自己判断で補聴器販売店から購入した場合は、この「診療等との直接的な関連性」や「医学的な必要性」の証明が不足するため、原則として医療費控除の対象とはなりません。

医療費控除適用を受けるための具体的な手続き

補聴器購入費用について医療費控除の適用を受けるためには、その補聴器が治療の一環として、または身体機能の補助のために医学的に必要不可欠である旨を証明する必要があります。国税庁の見解及び関連団体の指針によれば、以下の手続きが求められます。

  1. 専門医(補聴器相談医)の受診: まず、一般社団法人日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が認定する「補聴器相談医」の資格を持つ医師を受診し、詳細な聴力検査等を含む診察を受けます。
  2. 必要性の判断と証明書の発行: 診察の結果、医師が専門的な立場から、当該患者の聴覚の状態に対して補聴器の装用が治療効果の向上や日常生活の維持に直接必要であると判断した場合に、「補聴器適合に関する診療情報提供書」という所定の様式の書類が発行されます。この書類が、補聴器の医学的な必要性を証明する客観的な証拠となります。
  3. 証明書に基づく補聴器の購入: 発行された「補聴器適合に関する診療情報提供書」を、専門的な知識・技能を持つ補聴器専門店に提出します。そして、その情報提供書に記載された医師の指示・診断内容に基づいて、適切な器種選定と調整(フィッティング)が行われた補聴器を購入します。

この一連の手続きを経て購入した補聴器の費用のみが、医療費控除の対象として認められることになります。

確定申告時の必要書類

医療費控除を受けるために確定申告を行う際には、以下の書類が必要となります。

  1. 補聴器の代金に係る領収書: 購入年月日、金額、購入者名、販売店名が明記されたもの。
  2. 「補聴器適合に関する診療情報提供書」の写し: 上記手続きにより医師から交付されたもの。

ただし、上記2の書類については、「医療費控除の明細書」を作成する際に、その明細書の所定の欄または余白に、証明年月日、証明書の名称(「補聴器適合に関する診療情報提供書」)、および証明を行った医療機関名を記載することで、確定申告書への添付を省略することが認められています。とはいえ、税務調査等で提示を求められる可能性に備え、原本は5年間(※)大切に保管しておく必要があります。(※申告期限から5年間)

まとめ

補聴器購入費用の医療費控除適用には、医師(補聴器相談医)による医学的な必要性の判断と、それを証明する「補聴器適合に関する診療情報提供書」の取得が不可欠です。納税者の皆様におかれましては、補聴器を購入される前に、必ずこの手続きをご確認いただき、適正な申告に備えていただくようお願い申し上げます。ご不明な点がございましたら、税理士法人タクトまでご相談ください。