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時間外労働の上限規制から除外または猶予されている業種・業務

News新着情報

2021/08/10

時間外労働の上限規制から除外または猶予されている業種・業務

2019年4月に施行された働き方改革関連法により、現在では時間外労働の上限規制が罰則つきで適用されるようになっています。
一方で、上限規制の適用が除外されていたり、経過措置として2024年までは適用が猶予されていたりする業種・業務も存在します。
たとえば、研究開発業務、建設事業、自動車運転の業務、医師などがこれに該当します。
今回は、これらの業務の扱いについて、解説します。

上限規制の適用が除外されている『研究開発業務』

労働基準法では、原則として1日8時間および週40時間以内の労働しか認められておらず、これを超えて従業員を働かせるには、『時間外・休日労働に関する協定』、いわゆる『36協定』を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。

36協定を結んでいれば、時間外労働をしてもらうことが可能ですが、2019年4月に施行された働き方改革関連法により、現在は月45時間・年360時間を超える残業は規制されています
臨時的な特別な事情があり、労使が合意している場合はこれを超えてもかまいませんが、それでも以下のルールを守らなくてはなりません。

●時間外労働は年720時間以内
●時間外労働と休日労働の合計は月100時間以内、2~6カ月平均で月80時間以内
●時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6カ月まで

そして、これらに違反した場合は6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象になります。

しかし、この残業の上限規制を適用されていない職種があります。
それが、専門的・科学的な知識や技術をもつ人が従事する『新技術・新商品等の研究開発の業務』です。
これらは特定の時期に業務が集中することも多く、業務の特性を鑑みて、上限規制になじまないと判断されました。


どのような業務が研究開発業務なのか

では、どのような業務が『新技術・新商品等の研究開発の業務』に該当するのでしょうか。
具体的な範囲は個々のケースによって判断することが必要となりますが、行政解釈では以下のものが該当するとしています。

(1)自然科学、人文・社会科学の分野の基礎的または応用的な学問上、技術上の問題を解明するための試験、研究、調査
(2)材料、製品、生産・製造工程等の開発または技術的改善のための設計、製作、試験、検査
(3)システム、コンピュータ利用技術等の開発または技術的改善のための企画、設計
(4)マーケティング・リサーチ、デザインの考案ならびに広告計画におけるコンセプトワークおよびクリエイティブワーク
(5)その他、(1)~(4)に相当する業務

これらの業務に従事する人については、上限規制の適用が除外されます。
IT関連の新サービスの開発業務や、デザイン、マーケティング、広告の作成業務などが、これに該当すると考えられます。

注意したいのは、規制を超えて時間外労働をすることができるというだけで、残業手当や休日手当などの割増賃金は労働基準法に則って支払う必要があるということです。
さらに、1週間あたり40時間を超える時間外労働を課し、その累計が月100時間を超えた従業員に対しては、医師の面接指導を行うことが罰則付きで義務づけられています。

経営者は、医師の意見に基づいて、必要に応じた就業場所や職務の変更、有給休暇の付与などの措置を講じる必要があります。


上限規制の適用が猶予されている業種・業務

上限規制の適用を一定期間猶予されている業種・業務もあります。
それが建設事業、トラック運転手やタクシードライバーなどの自動車運転の業務、医師といった業務で、これらについては、上限規制の適用が2024年3月31日まで猶予されています。

2024年4月1日以降の適用条件については、以下のようになっています。

【建設事業】
災害の復旧・復興の事業を除き、上限規制が全て適用されることになっています。
災害の復旧・復興の事業については、『時間外労働と休日労働の合計で月100時間未満、2~6カ月平均で月80時間以内』とする規制は適用されません。

【自動車運転の業務】
特別条項付き36協定を締結している場合に限り、年間の時間外労働の上限が年960時間となります。
一方で、『時間外労働と休日労働の合計で月100時間未満、2~6カ月平均で月80時間以内』とする規制、および『時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6カ月まで』とする規制は適用されません。

【医師】
今後省令で定められることになり、その他の業種とは異なる規制が設けられる予定です。

このように、業種・業務によって残業の上限規制の適用除外や猶予はありますが、だからといって、やみくもに残業を課してもよいわけではありません。
事業者は働き方改革関連法を含めた労働法の中身を正しく理解し、従業員の仕事量をコントロールしながら、労働に従事させる必要があります。


※本記事の記載内容は、2021年7月現在の法令・情報等に基づいています。