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令和4年度 税制改正 中小企業向け「賃上げ促進税制」について(税理士法人タクト 監査担当・栗田良祐)

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コラム

2022/05/16

令和4年度 税制改正 中小企業向け「賃上げ促進税制」について(税理士法人タクト 監査担当・栗田良祐)



 みなさん、こんにちは!

 税理士法人タクト 監査担当・栗田良祐です。よろしくお願いいたします。

 この度、私が執筆させていただく内容は、令和4年度税制改正により税額控除率の上乗せ要件が見直された「賃上げ促進税制」についてです。現在、日本では、政策効果もあり雇用者数が増加し、総雇用者報酬も増加をしている状況ではありますが、1人当たりの実質賃金は大きく増加していないのが現状です。国の課題としては、1人当たりの実質賃金を伸ばしていくことが重要です。今回、賃上げ促進税制の中でも、個人及び中小企業向け「賃上げ促進税制」について説明させていただきます。

 「賃上げ促進税制」とは、中小企業者等が前年事業年度より給与等を増加させた場合に、その増加額の一部を法人税(または所得税)から税額控除(控除上限は法人税の20%まで。)できる制度です。この制度は令和4年度の税制改正となるため、令和4年4月1日以降に開始される事業年度(個人事業主は令和5年度分)が対象となります。(※「賃上げ促進税制」については、令和4年以前から実施されている制度となります。今回の記事では令和4年以前の制度概要及び変更点については記載していません。)

 「賃上げ促進税制」を噛み砕いてご説明しますと、「賃上げ促進税制」には3つの適用要件があります。これは3つの箱が積み重ねてあり、1つの箱毎に税額控除が適用されると考えていただければと思います。ただし1つ目の箱である通常要件(箱の土台部分)を満たさなければ、他の箱の要件を適用することはできません。適用と内容の概要については下記の図をご覧ください。







 さてここからは3つの箱について、内容を確認してみます。

 まず1つ目の箱、通常要件(基礎土台)です。

 適用要件は「雇用者給与等支給額が前事業年度と比べて1.5%以上の増加」です。賃上げ促進税制の少しわかりにくい部分があるとすれば、この「雇用者給与等支給額」という単語ではないでしょうか?雇用者給与等支給額とは、「適用年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される全ての国内雇用者に対する、給与等の支給額」をいいます。ではこの太文字を細かく見てみましょう。「全ての国内雇用者」とは、法人又は個人事業主の使用人のうち、国内に所在する事務所につき作成された賃金台帳に記載された者を指します。

 注意すべき点としましては、この使用人については、『雇用形態を問わず』でありますが、使用人兼務役員を含む役員及び役員の特殊関係者、個人事業主の特殊関係者は含まれません。

 では特殊関係者とはどのような人達でしょうか。これは役員または個人事業主の親族(6親等内の血族、配偶者の3親等内の姻族)と、役員または個人事業主から生計の支援を受けている者が該当します。大まかに言ってしまえば身内の従業員等は計算に含まれないと考えれば良いかと思います。「給与等」とは所得税法に規定する給与等と、非課税部分の通勤費が含まれます。また注意点としては給与等には現物支給も所得税法に規定する給与等に該当するため、現金支給額のみではないと考えましょう。 なお、退職金については、退職所得となるため給与等には含まれません。



 次に2つめの箱、上乗せ要件①(給与増額)です。

 適用要件は「雇用者給与等支給額が前事業年度と比べて2.5%以上増加」です。これは1つめの箱、通常要件における雇用者給与等支給額が2.5%以上であれば自動的に適用することができます。注意点は通常要件と同じです。



 最後に3つめの箱、上乗せ要件②(教育訓練)です。

 適用要件は「教育訓練費の額が前事業年度と比べて10%以上増加していること」です。まず教育訓練の対象者については雇用者給与等支給額の対象者と同じです。そのため、役員、使用人兼務役員、役員または個人事業主の特殊関係者に支払われるものは含みません併せて、まだ雇用関係でない内定者等の入所予定者に対するものも含まれないので注意しましょう。では続いて、教育訓練の内容ですが、外部講師等への報酬、謝礼金、招聘に要する費用(交通費・旅費・食費等)や施設・備品等の賃借または使用の対価として支払う費用が該当します。ただし、教育訓練を受ける者に対する交通費等や施設等に対する水道光熱費等は対象とならないことに注意が必要です。また上乗せ要件②を適用するためには教育訓練費の明細書を提出する必要がありますので、該当する場合は作成しなければなりません。



 以上賃上げ促進税制について大まかな内容を説明させていただきました。新型コロナウイルスにより大小問わず企業も苦戦していると思われますが、私たち税理士法人タクトは、全力で前向きにサポートいたします。ご質問、ご相談等ございましたら、ぜひお電話やお問い合わせから気兼ねなくご連絡ください。